数年前から、書籍やチラシ広告の見出しに
「整理術」という言葉を多く見かけるようになりましたが、
その内容について皆様は具体的にご存知でしょうか。
有名な某アートディレクターが著した書籍にも、
「整理術」を切り口にされたものがあります。
そこからも見受けられるように、実はクリエイティブ・デザインにおいて
「整理」は最も重要な要素として考えられているのです。
そこで、アートディレクターという視点から
この「整理術」を紐解き、皆様のお役に立てるよう、簡単に記して行こうと思います。
今回は、まずその初めとして、
念頭に置いていただきたいことをあげさせていただきます。
「整理術とは、モノの整理整頓だけではない」
ということです。
一般的に「整理術」と聞いて思い浮かべるのは、
単に「身の回りをキレイにしておく」といった、
「モノ」についてのことと捉えられがちなのではないでしょうか。
しかし本当の意味での「整理術」とは、
身の回りに起る事象の「本質」を捉える行為であり
モノの整理はその中の一つにすぎない、ということなのです。
堅苦しい言い方で、いまいちイメージを膨らませにくいかと思いますので
もう少し具体的にお話しを進めたいと思います。
まず「整理術」を進める上で大きく次の項目が挙げられます。
- モノの整理
- 状況(情報)の整理
- 思考の整理
これらを意識した整理を実践していくことで、
これまでの「整理・整頓」は、単なる物理的な「整理」だけはない
本質的な「方法論」となるのです。
もう少し踏み込んで言うと、
モノの整理とは、文字通り、必要なモノをその属性や優先順位などにより仕分け、整理していくことです。
状況(情報)の整理とは、今、起っている事象や情報、考えるべき対象とその周辺の環境や立ち位置など
様々な状況や情報を客観的・俯瞰的に捉え、その相対的な関係性を含め、全体的に把握することです。
思考の整理とは、上記のモノ・状況の整理に基づいて、次にすべき行為や、先の見通しを選択・判断し思考を整えていくということです。
この3つの「整理」はそれ単体だけでは決して機能せず、
モノを整理することで、状況や情報を整理しやすくし、状況や情報が整理されることで、判断基準を明確にし、
考えや思考が整理されるという具合に、それぞれのが関係し合い「方法論」として機能させることができるのです。
そして、この「整理術」の実践により、目の前のことから、さらにその先へ視野を広げ、さらなるステップへつなげられる可能性を導き出すのです。
さて皆様、何となくイメージを膨らませられたでしょうか。
この「整理術」はクリエイティブな領域に限らず、あらゆる場面に応用することができる手法なのです。
一度は耳や目にしたことがあるであろう「3S」や「5S」といった活動。
様々な企業で取り入れられ、実践されているこの活動もその本質は「整理術」につながるものなのです。
3S・5Sは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の項目を掲げ、様々な人が行き来する職場で、身の回りの環境を整える活動として、生産性や品質管理の面からも重要視されています。
一般的には、その内容は
- 「整理・整頓」の徹底
- 「清掃活動」の徹底
- 「ルール遵守」の徹底
として実践されていると思います。
しかしその活動も、単なる「物理的な整理」として捉えてしまうと、その本質的効果は発揮されず、逆に「面倒な活動」として、ネガティブな印象を与えるものとなってしまいかねません。
そこで、今回お話している「整理術」の観点を踏まえて考えることで、その活動も、本質的な「方法論」として、本来の効果を発揮できるのです。
そのためには「状況・情報の整理」「思考の整理」を意識し、3S・5S活動を展開していくことが求められます。
つまり、ただキレイにしたり整えたりするのではなく、活動状況やその先の行動を踏まえ、実践することが大切なのです。
ファイルの並び順を揃えるにしても、使用頻度や用途目的に応じて整理したり、清掃に関しても、保守やメンテナンスの必要性を意識して行うなど、ちょっとした意識を加えるだけでも、その結果に大きな差をもたらす可能性があるのです。
さて、若干回りくどい言い方も多くなってしましましたが、皆様、イメージは膨らませられたでしょうか。
皆様のビジネスシーンやライフスタイルが、より円滑に、より快適になることを願っております。